植物性屋根材一覧

草葺き・板葺きに始まり、奈良時代には檜皮葺き・こけら葺き・土居葺きが使用されましたが、現代の工法とはかなり違うものです。鎌倉時代に入ってから国宝重要文化財に残っている工法の原点が生まれました。

樹皮葺き

樹皮を剥ぎ取った物で葺きあげたものです。

◆檜皮葺き(ひわだふき)

檜の立ち木より原皮師(もとかわし)と呼ばれる特殊な技術を持った職人が採取し、屋根工(葺き師)が製品加工を施した檜皮で葺き上げる。檜皮は、樹齢100年以上の立木檜から10年周期で採取され、樹皮を剥ぎ取る技術は世界でもまれにみる日本固有のものであり、主に社寺に多く使われている。

 

厚さ1.5~1.8mmの檜皮を用いて12mm足で葺き上げる。平葺皮・軒付皮・道具皮を駆使して葺き上げる。また製品皮の前の状態を原皮(もとかわ)という。檜皮原皮とは桧木の立ち木を剥ぎ取ったもので、木の甘皮を残して外部をカナメの木で作ったヘラを以って、は剥ぎ取るが甘皮は木の成長に大切な部分でこれを傷めないように丁寧に残さなければならない。桧木の立ち木100年以上のものが適当で、過去に何度も剥ぎ取った木の皮は特に良質である。これを文化財の工事仕様書には丹波産黒背皮という名称で書かれている。他にも地方から岐阜皮・木曽皮・高野皮・桜井皮と名の付く材料がある。しかしいずれにしても関西地区または岡山地区などで採取した黒背皮もあり、丹波産とはいずれも変わりはない。平葺皮は長さ75cm、口巾15cmで社寺用に使用する。また、住宅用腰葺並びに庭園中門など二ッ切にした材料を使用する。現在,桜井皮と称して45cm仕立ての皮が出まわっている。この他に製品として棟際葺き詰めなどに三ッ切という名称の皮も使用する。軒付皮は長さ75cm皮を半分切したもので、これは平葺皮を製品にする場合巾の狭いもの、または長さが75cmないものを引き違いにして、菖蒲の葉のように拵える。道具皮の種類として上目皮・留皮・隅葺皮・箕甲皮・谷葺皮・唐破風箕甲皮など大小いろいろある。

◆杉皮葺き(すぎかわふき)

杉の樹皮で屋根を葺いたもので、民家・数寄屋・庭園の門などに見られる。民家では、植林地帯の杉が伐採され剥がされた杉皮を利用している場合が多い。春皮は虫がつきやすく、秋皮が良しとされている。

板葺き

◆杮葺き(こけらふき)

椹・杉・槇・栗などを使用する。直径50cm内外のもので、樹齢70~80年生のものが良い。木には油分があり粘着力のあるものが良い。主に文化財に使用されているには椹材が多い。以前は杉材を使用されたが現在では材料が少なくほとんど使用されない。また地方において、槇・栗なども使用される。

 

◆木賊葺き(とくさふき)

板の厚さ4~6mmのものを言う。昔から貴重であまり建物は残っていない。

◆栩葺き(とちふき)

板の厚さ10~30mmの厚い板を用いる。有名なところでは滋賀県延暦寺根本中堂がある。

◆土居葺き(どいふき) 【下葺き施工】

土居葺板には、手割板と機械板がある。手割板とは杮板(こけらいた)の木口が化粧になっていないもの。機械板とは、鉋クズと言われることのある薄いものである。

◆土居葺き(機械板)
◆土居葺き(手割板)